「リアルわさび」を海外へ広げるために。 ~継続出展こそが力~
輸出を拡大させるための秘訣や継続して出展するメリットについて、第1回開催(2017年)から「“日本の食品”輸出EXPO」(以下「食品輸出EXPO」)に参加する三和食品(株)の代表取締役社長 石川徹也さんに、営業担当 廣瀬圭(主催者)がお話を伺いました。
・輸出のさらなる拡大を目指し「“日本の食品”輸出EXPO」へ参加
−■廣瀬:改めて貴社の事業内容を教えてください。
−■石川社長(以下 石川):おろしわさびやおろし生姜、とろろや大根おろしなどの製造販売を群馬県にて手掛けています。海外輸出している製品としては、フレッシュわさびやおろしわさび、国産ゆず果汁、甘酢生姜といった製品になります。
−■廣瀬:いつから輸出に取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
−■石川:1993年に商社からの提案を受け始め、香港へのチューブわさびの輸出が始まりでした。
−■廣瀬:輸出事業の売り上げはどの程度だったのでしょうか。
−■石川:年間で約1億円ぐらいです。これが震災直後にほぼ半減しました。
−■廣瀬:震災後はどのように売り上げを回復されたのでしょうか?
−■石川:このままではまずいと思い、まずはJETRO(日本貿易機構)主催の海外開催の展示会に出展しました。その他にも日本で開催されていた展示会の群馬県ブースに出展していましたが、海外バイヤーの来場が乏しく出展を取りやめました。この展示会に変わったのが「食品輸出EXPO」なんです。
・日本にいながら80カ国の海外バイヤーと直接商談できる「“日本の食品”輸出EXPO」
−■廣瀬:「食品輸出EXPO」を知った経緯についてお聞かせください。
−■石川:「食品輸出EXPO」はJETROがバックアップしていましたよね?
−■廣瀬:はい。開催当初から現在までJETROに共催、農林水産省にご協力いただいています。
−■石川:JETROからの案内をもらったのがきっかけでした。やはり安心感がありました。
−■廣瀬:最初に出展を決めた理由は何だったのでしょうか。
−■石川:海外のお客様から「日本でこういう展示会をやるらしいけど、三和食品は出るの?」と聞かれたことが一つの理由ですね。海外バイヤーが日本へ来るのだったら出ておかねばならないなと。当社からもすでに繋がりのある海外バイヤーに「日本で始まるこの展示会に出ますので、ぜひ来てください」と告知しました。
−■廣瀬:立ち上げ当初から継続して出展している理由を教えてください。どういった点にメリットを感じていらっしゃるのでしょうか。
−■石川:まず、こちらから海外に行かずとも、海外バイヤーと商談できることが大きいです。「食品輸出EXPO」には日本の食品に興味のあるバイヤーがこぞって来てくれますからね。
−■廣瀬:「食品輸出EXPO」には最大80カ国の海外バイヤーの参加実績があり、コロナ前には約4,000名の海外バイヤーが参加しました。海外バイヤーの参加数がこれだけ多いのは、主催としても誇りです。
−■石川:出展側としても、ここまで様々な国のバイヤーと日本にいながらにして出会えるのは大きいです。「食品輸出EXPO」くらいじゃないでしょうか。あとは事前マッチングシステムがあるのも有り難いですね。そのあたりは他の展示会とは違うなと思います。出展料は正直お安くはありませんが、出る価値があると判断しています。
−■廣瀬:「食品輸出EXPO」に出たことで、新たな国と付き合いができたなど、何か具体的な変化はありましたか?
−■石川:過去には上手くいかなかったアメリカのバイヤーに会えたことでしょうね。
これまでアメリカではわさびといえば中国産の「西洋わさび」が主流でした。弊社のわさびは「本わさび」、つまり「リアルわさび」として打ち出したことで、バイヤーに気に入ってもらい、アメリカ市場を開拓することができました。また近年の円安のおかげで中国製品との価格差が小さくなり、そのおかげで輸出額が10%ほど増えました。
・「“日本の食品”輸出EXPO」への出展で海外の規制・最新のニーズを知る
−■廣瀬:輸出を行う上で何か苦労した点はありますか?
−■石川:各国の食品に関する規則やハラルなど宗教的な慣習を把握するのが難しかったです。
規則や規制も国によって異なりますし、時期によっても変わってきます。こういった規則などの最新情報を収集できるのも「食品輸出EXPO」の利点ですね。
−■廣瀬:その他、輸出を円滑に行うために工夫されていることはありますか?
−■石川:より多くの海外バイヤーと関係性を作ることです。
為替の値動きで今のような円安の状態から変化があっても、海外バイヤーと良好な関係性を築けていればそれほど過度に心配する必要はないのではとも思っています。そのためにも、今きちんと関係性を築いておくことが重要でしょうね。
一方で、海外バイヤーと関係性を築くだけでなく、輸出を成功させるためには多くの商社と出会っておくことも大事です。
−■廣瀬:その点では、「食品輸出EXPO」には海外バイヤーだけではなく多くの日本の商社も来場しているので、商社との出会いの場としても活用できるということですね。
・輸出事業を続ける限り、「“日本の食品”輸出EXPO」に出展し続けます
−■廣瀬:今後の展望についてお聞かせください。
−■石川:新しく、国産フルーツの冷凍ピューレを海外用に展開していきます。すでにアメリカやタイに出すことが決まりました。
−■廣瀬:今後、輸出を強化したい国はあるんですか?
−■石川:アジアですね。アジア諸国では日本のフルーツのニーズが非常に高く、金額が高くても買ってもらえるのです。
−■廣瀬:では、これから出会いたいバイヤーは?
−■石川:小売系のバイヤーと、アイスクリームや飲料などの原料として使いたい業務用関係のバイヤーですね。
−■廣瀬:最後に、これからより輸出事業を拡大したい企業に対して、何かメッセージやアドバイスがあればお願いします。
−■石川:まず「情報」を得るためにも展示会は有効だと思いますね。「食品輸出EXPO」であれば国内開催ですから、費用をかけて海外に足を運ぶことなく、多くの国の最新情報を入手できる。日本食を食べながら海外バイヤーと会話をし、相手の「これがほしい」を聞き出して提案できる有意義な場だと思います。
−■廣瀬:やはり、継続して出展することが大切だということでしょうか。
−■石川:そうですね。継続は力ですから。弊社も輸出事業を続ける限り、「食品輸出EXPO」に出展し続けるつもりです。出展し続けることで、お客様との関係性も続く。出なくなってしまうと他社に変えられてしまうかもしれません。日本食品に興味があって、わざわざ足を運んできてくれる海外バイヤーと出会える場を利用しない手はないと思います。
<お話を伺った方>
三和食品株式会社 代表取締役社長 石川徹也さん