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通関作業とは?手続きの流れや所要時間などを解説

通関作業とは?輸出入における重要性

通関作業は、商品が国境を越える際に必要となる法的手続きの総称で、輸出入の両方に適用されます。国際貿易において欠かせない重要なプロセスです。具体的には、税関に対して必要書類を提出し、関税の納付や輸出入規制の遵守を確認する一連の作業を指します。

また、通関作業は単なる法的手続きにとどまらず、企業の競争力への影響も見逃せません。

効率的な通関プロセスを構築することで、リードタイムの短縮やコスト削減が可能となり、結果として顧客満足度の向上につながります。特に生鮮食品の輸出では、この点が重要となってきます。

食品輸出に携わる企業は、通関作業に関する理解を深めることで、より戦略的な事業展開が可能となるでしょう。


- 通関作業の目的

通関作業の主な目的は、国家の安全保障を維持しつつ、適正な貿易管理と税収確保を行うことです。同時に、違法な物品の流通を防ぎ、国内産業の保護にも寄与しています。

輸出入業者にとっては、この手続きを適切に行うことで、スムーズな商品の移動と取引の円滑化が実現可能です。

また、通関作業は「国際貿易の円滑化」と「法令遵守」のバランスを取る重要な役割を果たしています。適切な通関手続きにより、貿易取引の透明性が確保され、不正な取引や密輸を防止することができます。

一方で、通関作業を怠ったり、不適切に行ったりした場合、深刻な法的問題や経済的損失につながる可能性があります。虚偽申告や必要書類の不備は、罰金や商品の没収、さらには輸出入ライセンスの取り消しなどの厳しい処罰を受ける可能性があるでしょう。

また、通関手続きの遅延は、ビジネスチャンスの損失や取引先との信頼関係の悪化を招く恐れがあります。


- 輸出通関と輸入通関の違い

輸出通関と輸入通関は、同じ「通関」という言葉を使用していますが、その目的や手順には重要な違いがあります。

輸出通関は、自国から商品を海外に送り出す際に行われる手続きです。

この過程では、輸出者が税関に対して輸出申告を行い、必要な書類を提出します。主な目的は、輸出規制品の管理や安全保障上の確認、そして輸出統計の作成です。

一方、輸入通関は、海外から商品を自国に持ち込む際に行われる手続きで、輸入者が税関に輸入申告を行い、関税や消費税などを納付します。

また、輸出通関では、一般的に関税の支払いは不要ですが、輸入通関では関税や諸税の納付が必要です。これは、自国の産業保護や税収確保の観点から重要な役割を果たしています。

共通点としては、両者とも税関による審査や検査が行われる点が挙げられます。また、近年ではNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を利用した電子申告が一般的となり、手続きの効率化が図られています。


- 通関作業が国際貿易に与える影響

通関作業は、国際貿易の円滑な運営を支える重要な要素です。適切に行われる通関手続きは、商品の迅速な移動を可能にし、グローバルなサプライチェーンの効率性を高めます。

また、通関作業の効率化は、企業のコスト削減にも大きく寄与します。手続きの簡素化や電子化により、人件費や保管費用を抑えることができ、結果として価格競争力の向上につながります。また、迅速な通関処理は在庫回転率を上げ、キャッシュフローの改善にもつながるでしょう。

一方、通関作業の遅延は様々な問題を引き起こします。納期遅延による取引先との信頼関係の悪化、追加の保管費用の発生、さらには契約違反によるペナルティの可能性もあります。食品輸出の場合、検疫の遅れによる商品の劣化や廃棄のリスクも高まります。

近年、通関作業の国際的な標準化が進んでおり、世界税関機構(WCO)が推進する「AEO制度」(認定事業者制度)は、信頼性の高い事業者に対して通関手続きの簡素化や迅速化を図る取り組みです。日本も2006年からこの制度を導入し、国際的な貿易円滑化に貢献しています。

食品の通関手続きの基本的な流れ

食品の輸出入においても、通関手続きは非常に重要なプロセスです。この手続きを適切に行うことで、スムーズな国際取引が可能となります。

食品の通関手続きは複雑で時間がかかることがありますが、事前に十分な準備をし、必要な書類を整えることで、スムーズな通関が可能です。

特に、はじめて輸出入を行う場合は、専門家や通関業者のアドバイスを受けることをお勧めします。適切な通関手続きは、安全で信頼性の高い国際食品取引のベースとなるからです。

ここでは、食品の輸出入における通関手続きの基本的な流れを解説します。


- 輸出品の通関検査を通す手順

食品輸出における通関検査は、製品の安全性と品質を確保するための重要なプロセスです。この手順を適切に行うことで、スムーズな輸出が可能となり、国際市場での競争力を高めることができます。

まず、輸出通関の基本的な流れを時系列で見ていきましょう。
 

【①貨物を保税地域に搬入】
保税地域とは、通常、港や空港の近くにある専用の施設で、税関の管理下に置かれています。搬入後、輸出申告の準備に入ります。
 

【②必要書類を揃えて輸出申告を行う】
主な書類には、輸出申告書、インボイス、パッキングリスト、原産地証明書などがあります。食品輸出の場合、衛生証明書や検疫証明書も必要となることがあるため、事前に確認が必要です。
 

【③税関による審査】
この段階で、申告内容と実際の貨物が一致しているか、禁制品や規制品目が含まれていないかなどがチェックされます。場合によっては、現物検査が実施されることもあります。
 

【④輸出許可】
審査や検査に問題がなければ、輸出許可が下ります。この許可を受けて初めて、貨物を船舶や航空機に積み込むことができ、積み込み後、貨物は目的地に向けて出発します。
 

輸出通関特有の注意点やチェックポイントとしては、以下の点に留意が必要です。

まず、HSコード(関税分類番号)の正確な特定が重要です。食品の場合、細かな分類があるため、誤りのないよう注意が必要となります。また、輸出先国の規制や基準を事前に確認し、必要な証明書や許可を取得しておくことも大切です。

特に食品輸出の場合、温度管理や賞味期限の問題があり、生鮮食品や冷凍食品は、保税地域での保管や輸送中の温度管理に細心の注意を払う必要があります。また、賞味期限の短い食品は、通関手続きから輸送、現地での販売までの時間を考慮して準備することが重要です。

さらに、食品添加物や遺伝子組み換え食品に関する規制は国によって異なるため、輸出先国の基準を満たしているか確認が必要です。場合によっては、ラベル表示の変更や追加の検査が求められることもあります。


- 輸入品の通関検査を通す手順

食品の輸入通関は、安全性と品質確保のために厳格な手順が設けられています。この過程を適切に進めることで、円滑な輸入と国内流通が可能となります。

まず、輸入通関の基本的な流れを時系列で見ていきましょう。

 

【①貨物の到着と保税地域への搬入】
外国から到着した食品は、まず保税地域に搬入されます。ここで、輸入申告の準備が始まります。

 

【②輸入申告書類の準備】
輸入者は必要な書類を揃えます。主な書類には輸入申告書、インボイス、パッキングリスト、原産地証明書などがあります。食品の場合、衛生証明書や検疫証明書も必要になることがあります。

 

【③輸入申告】
準備した書類を添付し、税関に輸入申告を行います。現在は、NACCSという電子システムを通じて申告するのが一般的です。

 

【④税関による審査と検査】
税関は提出された書類を審査し、必要に応じて現物検査を行います。食品の場合、厚生労働省の検疫所による食品衛生法に基づく審査も並行して行われます。

 

【⑤関税等の納付】
審査と検査に問題がなければ、輸入者は関税や消費税などを納付します。

 

【⑥輸入許可】
納付完了後、税関から輸入許可書が発行されます。これにより、輸入品を国内に持ち込むことが可能になります。

 

次に、輸入通関特有の注意点やチェックポイントを挙げていきます。

まず、食品輸入特有の規制に注意が必要です。例えば、食品衛生法に基づく「食品等輸入届出書」の提出が必須です。また、農林水産省所管の植物防疫法や家畜伝染病予防法に基づく検疫が必要な場合もあります。

HSコード(関税分類番号)の正確な特定も重要です。食品は細かな分類があるため、誤りのないよう慎重に確認する必要があります。

また、原産地規則にも注意が必要です。特恵関税の適用を受ける場合、原産地証明書の提出が求められます。

輸入通関を円滑に進めるためには、事前準備がポイントです。はじめて輸入する食品の場合、事前に厚生労働省の「輸入食品相談指導室」に相談することで、必要な手続きや注意点を確認できます。


- 通関検査における保税地域の役割

保税地域とは、関税の支払いを留保したまま外国貨物を取り扱うことができる特別な場所です。この制度により、輸出入業者は様々な恩恵を受けることができますが、同時にいくつかの制約も存在します。

保税地域の主な役割は、税関による適切な管理と検査を可能にすることです。輸出される食品は、保税地域内で税関の厳格な検査を受けます。これにより、食品の安全性や品質、輸出規制への適合性などが確認されます。農産物の場合、植物検疫証明書の確認や残留農薬検査などが行われることがあります。

また、保税地域は輸出業者にとって、商品の一時的な保管場所としても機能します。これにより、輸出のタイミングを柔軟に調整することが可能となり、市場の需要に応じた戦略的な出荷計画を立てることができます。特に季節性の強い食品や鮮度が重要な水産物などの輸出において、この機能は非常に有用です。

保税地域の主なメリットとデメリットには、以下が挙げられます。

メリット

デメリット

  • 関税の支払いを延期できる
  • 商品の仕分けや包装の変更ができる
  • ラベル貼付などの軽微な作業ができる
  • 外国貨物の展示ができる
  • 手続きや管理のコストがかかる
  • 大規模な加工や製造はできない
  • 保管期間が決まっている
    (指定保税地域:1ヶ月、保税蔵置場:3ヶ月)

保税地域の効果的な活用には、輸出計画の綿密な立案が不可欠です。輸出先国の季節イベントに合わせた出荷や、複数の輸出先への効率的な配送などを考慮し、保税地域の特性を最大限に活かすことが重要です。

食品の輸出入通関に必要な書類と準備

食品の輸出入通関を円滑に進めるためには、適切な書類の準備と手続きが不可欠です。輸出入の種類や食品の特性によって必要な書類は異なりますが、基本的な書類と準備について解説します。

また、食品の輸出入通関は一般的な工業製品よりも複雑で、より厳格な管理が求められます。

しかし、適切な準備と正確な書類作成により、スムーズな通関が可能となります。常に最新の情報を入手し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、慎重に手続きを進めることが重要です。


- 輸出通関に必要な書類

ここでは、輸出通関に必要な基本的な書類とその役割、作成時の注意点について解説します。

輸出時に必要な書類は、主に以下が挙げられます。

輸出申告書

  • 輸出申告書は通関手続きの中核となる書類
  • 商品の詳細、数量、価格、仕向地などの情報を記載
  • 正確な記入が求められ、特にHSコード(関税分類番号)の選択には細心の注意が必要
インボイス
(仕入書)
  • 取引の基本となる書類で、商品の明細、価格、支払条件などを記載
  • 輸入者との契約内容を正確に反映させることが重要
  • 食品の場合は原材料や添加物の詳細な記載が求められることがある
パッキングリスト
(梱包明細書)
  • 梱包ごとの内容物、重量、寸法などを記載
  • 食品輸出の場合、温度管理が必要な商品については、梱包方法や保冷剤の使用状況なども明記する

原産地証明書

  • 輸出する食品の原産国を証明する書類
  • 特恵関税の適用を受ける場合に必要
  • 産地偽装などの問題を避けるため、正確な情報を記載することが重要

衛生証明書

  • 食品輸出では要求されることが多々ある書類
  • 輸出する食品が衛生基準を満たしていることを証明
  • 輸出先国の基準に合わせて取得する必要がある

放射性物質検査証明書

  • 東日本大震災以降、一部の国や地域では日本からの食品輸入に際して放射性物質検査証明書を要求
  • 該当する場合は、適切な検査機関で証明書を取得

植物検疫証明書

  • 植物性食品を輸出する場合に必要なことがある
  • 病害虫の付着がないことを証明する書類

また、書類作成時の注意点として、以下の点に留意しましょう。

  •  一貫性:すべての書類で商品名、数量、価格などの情報を一致させる
  • 正確性:特にHSコードや原産地の記載には細心の注意を払う
  • 完全性:必要な情報をもれなく記載し、署名や押印が必要な箇所を確認する
  • 言語:輸出先国の要求に応じて、英語や現地語での記載が必要な場合がある

一般的なミスとしては、HSコードの誤選択、数量や価格の不一致、必要書類の不足などが挙げられます。これらのミスは通関手続きの遅延や、最悪の場合、輸出許可が下りないなどの問題を引き起こす可能性があります。

食品輸出の通関作業は複雑で、要求される書類も多岐にわたります。不明な点がある場合は、税関や専門の通関業者に相談しましょう。


- 輸入通関に必要な書類

食品の輸入通関を円滑に進めるためには、適切な書類の準備が不可欠です。ここでは、輸入通関に必要な基本的な書類とその役割、作成時の注意点について解説します。

輸出時に必要な書類は、主に以下が挙げられます。

輸入(納税)申告書

  • 輸入通関の中核となる書類で、輸入者が税関に提出
  • 商品の詳細、数量、価格、原産地などの情報を正確に記載
  • HSコード(関税分類番号)の選択には細心の注意が必要

インボイス(仕入書)

  • 売主が買主に対して発行する商業文書
  • 取引される商品の明細、価格、支払条件などが記載
  • 食品輸入の場合、原材料や添加物の詳細な記載が求められることがある

パッキングリスト
(梱包明細書)

  • 貨物の梱包状態、重量、寸法などの詳細を記載した書類
  • 食品輸入では、温度管理が必要な商品については、梱包方法や保冷剤の使用状況なども明記すると良い

船荷証券(B/L)または
航空運送状(AWB)

  • 貨物の受け取りと引き渡しに関する権利を示す重要な書類
  • 記載内容がインボイスやパッキングリストと一致していることを確認

保険料明細書

  • 貨物に掛けられている保険の詳細を示す書類
  • 保険の種類や補償範囲を正確に記載する必要がある

食品等輸入届出書

  • 食品衛生法に基づいて厚生労働省に提出する書類
  • 食品の安全性を確保するための重要な手続きであり、正確な情報を記載することが求められる

原産地証明書

  • 特恵関税の適用を受ける場合に必要となる書類
  • 原産地規則を十分に理解し、適切な証明書を取得することが重要

検疫証明書

  • 動植物性食品の場合、輸出国の政府機関が発行する検疫証明書が必要となることがある
  • 日本の検疫基準に適合していることを確認する

先ほど説明した輸出時の書類作成のポイントと同様に、輸入に際しても「一貫性」「正確性」「完全性」「言語」に注意しながら、書類を作成しましょう。

また、食品輸入特有の注意点として、アレルギー物質や遺伝子組み換え食品の表示、賞味期限の記載なども重要です。これらの情報が適切に記載されていないと、通関後の国内流通に支障をきたす可能性があります。


- HSコードの確認方法

食品輸出の通関作業において、HSコード(Harmonized System Code)の正確な特定は極めて重要です。HSコードは、国際貿易における商品分類の世界共通システムであり、適切なコードの使用が円滑な輸出プロセスのポイントになります。

まず、HSコードの構造と分類方法を理解しましょう。HSコードは6桁の数字で構成され、以下のように階層化されています。

  1. 上2桁:類(Chapter)
  2. 上4桁:項(Heading)
  3. 上6桁:号(Sub-heading)

例えば「0803.90」というHSコードの場合、「08」が類、「0803」が項、「0803.90」が号を表します。この6桁までが国際的に統一されており、7桁目以降は各国が独自に設定できます。日本では9桁まで細分化されています。

正確にHSコードを特定することは、以下の点で重要です。

  •  関税率の決定:HSコードによって適用される関税率が異なる
  • 輸出入規制の確認:特定の商品に対する規制や制限を把握できる
  • 統計データの正確性:国際貿易統計の精度向上に関係する
  • 通関手続きの円滑化:正確なコードにより、手続きが迅速化される

HSコードを確認する方法はいくつかありますが、以下のツールや手順が便利です。

  • 税関のウェブサイト:日本税関のサイトで「実行関税率表」や「輸出統計品目表」を参照
  • ジェトロ(JETRO)のデータベース:貿易に関する様々な情報とともにHSコードを検索
  • 民間のHSコード検索ツール:オンラインで利用可能な検索エンジンあり
  • 税関の事前教示制度:輸出前に税関に照会し、正確なHSコードを確認できる
  • 通関業者や貿易アドバイザーへの相談:専門家のアドバイスを受けることで、より確実な判断が可能

食品輸出の場合、特に注意が必要な点があり、加工度によってHSコードが変わることがあります。生鮮品と加工品では異なるコードが適用される場合があるため、製品の状態を正確に把握することが重要です。

また、季節や品種によってもHSコードが変わる可能性があります。例えば、同じりんごでも、品種や収穫時期によって異なるコードが割り当てられることがあります。

さらに、近年のトレンドとして、健康食品や機能性食品など、新しいカテゴリーの食品が増えています。これらの製品のHSコード特定には特に注意が必要で、成分や効能によって分類が変わる可能性があります。

食品の通関手続きにかかる時間と短縮のポイント

財務省の調査によると、通関手続きにかかる時間は、貨物が日本に到着してから平均2.3日となっています(海上貨物)。ただし、所用時間が短い小口貨物を除くと、平均3.9日かかっています。

参考:財務省「第13回輸入通関手続の所要時間調査集計結果(航空貨物)」

食品の場合は特別な検査や証明書が必要となることが多く、この期間が延びる可能性があるため注意が必要です。

また、通関手続きの所要時間は、様々な要因によって変動します。輸出入する食品の種類、数量、原産地、さらには季節性などによって影響があります。特に生鮮食品や冷凍食品の場合、品質維持のために迅速な通関が求められるため、時間短縮が重要な課題です。


- 通関手続きの所要時間の目安

通関手続きにかかる時間は、輸送方法や貨物の種類、季節などによって大きく異なる可能性があります。

輸送方法による所要時間の違いを見てみると、海上貨物と航空貨物で大きな差があります。海上貨物の場合、通常1〜3日程度かかりますが、航空貨物では1日以内に完了することが多いです。

これは、空港に税関が常駐していることや、航空機の運行スケジュールの都合上、迅速な処理が求められるためです。

食品輸出の場合、特に注意が必要なのが検疫手続きです。植物性食品や畜産物は、追加の検査が必要となる場合があり、これにより通常よりも時間がかかることがあります。生鮮食品や冷凍食品は、温度管理や鮮度確認のための検査に時間を要する可能性があります。

また、通関手続きが長引く一般的な原因としては、以下が挙げられます。

  • 書類の不備や記載ミス
  • HSコード(関税分類番号)の誤り
  • 輸出禁止品目や規制品目の疑いがある場合
  • 原産地証明書の不備
  • 食品安全基準に関する追加検査の必要性

さらに、季節や時期による通関所要時間の変動も考慮する必要があります。

例えば、年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇期間は、税関の人員が限られるため、通常よりも時間がかかる傾向にあります。また、クリスマスシーズンなど、輸出入が集中する時期も同様です。


- 通関手続きを迅速化するための戦略

食品の輸出入における通関手続きの迅速化は、ビジネスの効率性と競争力を高める上で極めて重要です。適切な戦略を立てることで、通関にかかる時間を大幅に短縮できるでしょう。

そのために、まずは事前準備と書類の正確性がポイントです。輸出する食品の詳細な情報、原産地証明書、衛生証明書などの必要書類を事前に準備し、記載内容に誤りがないか何度も確認してください。特に、HSコード(関税分類番号)の正確な特定は、通関手続きの遅延を防ぐポイントにもなります。

また、電子申告システムの活用も、通関手続きの迅速化に大きく役立ちます。日本では、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)が広く利用されており、このシステムを通じて申告することで、書類提出や審査にかかる時間を大幅に短縮可能です。また、リアルタイムで手続きの進捗状況を確認できるため、効率的な対応ができます。

さらに、AEO(認定事業者)制度の活用も、通関手続きの迅速化に有効です。この制度は、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者に対して、税関手続きの緩和や簡素化などの特例措置を与えるものです。AEO認定を受けることで、検査率の軽減や、簡易な通関手続きが可能となり、リードタイムの短縮につながります。

経験豊富な通関業者は、複雑な規制や手続きに精通しているため、専門家を上手く活用することで潜在的な問題を事前に回避できます。


- 通関遅延のリスクと対策

食品輸出における通関遅延は、ビジネスに深刻な影響を与える可能性があります。遅延が引き起こす具体的な問題やリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

まず、通関遅延が引き起こす具体的な問題やリスクには、以下のようなものがあります。

  • 商品の品質劣化:生鮮食品や冷凍食品の場合、遅延により商品の鮮度や品質が低下する可能性がある
  • 契約違反:納期遅延により、取引先との契約条件を満たせなくなるリスクがある
  • 信用失墜:繰り返しの遅延は、取引先からの信頼を損なう可能性がある
  • 追加コストの発生:保管料や緊急輸送費用など、予期せぬ追加費用が発生する
  • 市場機会の喪失:季節商品や特定のイベント向け商品の場合、タイミングを逃すと販売機会を失う


これらのリスクを軽減するため、次のような事前対策を講じることが重要です。

  • 書類の完全性確認:必要な書類を事前に準備し、記載内容の正確性を徹底的にチェック
  • HSコードの正確な特定:商品のHSコード(関税分類番号)を正確に把握して申告
  • 通関業者との連携強化:通関業者と緊密に連携し、潜在的な問題を事前に特定・解決
  • AEO認証の取得:AEO制度を活用し、簡素化された通関手続きを受ける
  • 輸出先国の規制把握:輸出先国の最新の輸入規制や要件を常に把握
  • スケジュール設定:通関手続きに要する時間を考慮し、余裕を持ったスケジュールの立案
  • デジタル化の推進:NACCSなどの電子申告システムを積極的に活用


また、万が一、遅延が発生した場合、以下のような対応を取りましょう。

  • 迅速な情報共有:遅延の可能性が判明した時点で、取引先に速やかに連絡
  • 代替案の提示:可能な限り、代替輸送手段や代替商品の提案
  • 透明性の確保:遅延の原因と対策を明確に説明し、進捗状況を定期的に報告
  • 補償の検討:契約条件に基づき、適切な補償を検討・提案
  • 再発防止策の立案:遅延の原因を分析し、具体的な再発防止策を策定・実施

通関遅延に関する保険や補償制度は、リスク管理において重要です。

通関遅延のリスクを完全に排除することは難しいですが、適切な準備と迅速な対応により、その影響を最小限に抑えることができるでしょう。

通関業者の役割と利用のメリット

通関業者は、複雑な通関手続きを専門的に代行することで、輸出プロセスを円滑に進める重要な存在です。

また、通関業者は「財務大臣の許可を受けて活動する専門家」であり、その知識と経験を活かして輸出企業をサポートしてくれます。

ただし、通関業者に全面的に依存するのではなく、基本的な通関知識を自社でも持つことが重要です。これにより、通関業者とのコミュニケーションがより円滑になり、より効果的な協力関係を築くことができるでしょう。

ここからは、通関業者の役割とメリットについて解説します。


- 通関業者の主な業務内容

通関業者は、国際貿易における重要な役割を担っており、その業務内容は多岐にわたります。

また、通関業者の主な役割として、以下の作業が挙げられます。

  • 輸出申告書類の作成と提出
  • 関税や諸税の計算と納付代行
  • 輸出規制品の確認と必要な許可申請
  • 税関検査への立ち会い
  • 輸出貨物の保管や輸送の手配
  • 輸出先国の規制や要件への対応

主要なサービスとして、まず挙げられるのが輸出入申告の代行です。これは、税関に対して必要な書類を提出し、適切な手続きを行ってくれます。

また、関税や消費税などの計算と納付代行も重要な業務の一つです。通関業者は、複雑な税率や規則を熟知しており、正確な税額の算出と適切な納付を行います。これにより、輸出入業者は煩雑な税務手続きから解放されます。

さらに、通関業者は輸出入に関する法令遵守のサポートも行います。常に変化する国際貿易の規制や法律に精通し、クライアントに最新の情報と適切なアドバイスをします。これは、法令違反のリスクを最小限に抑え、スムーズな貿易活動を維持するために不可欠です。

近年、通関業者の業務範囲は拡大傾向にあります。例えば、サプライチェーン全体のマネジメントに関与するケースが増えています。これには、輸送手段の選択や最適化、倉庫管理、在庫管理などが含まれます。このような総合的なサービスの提供により、クライアントは効率的かつコスト効果の高い物流戦略を構築できるでしょう。


- 通関業者を利用するメリット

通関業者を利用するメリットは多岐にわたりますが、主なものとして以下が挙げられます。

リスク軽減

  • 申告ミスや法令違反のリスクが大幅に減少する
  • 食品輸出では各国の厳格な食品安全基準に対応する必要があり、専門家のサポートは不可欠

時間と労力の節約

  • 複雑な通関手続きを専門家に任せることで、輸出企業は自社の核となるビジネスに集中できる
  • 中小企業や食品輸出の初心者にとって、この時間と労力の節約は大きな価値あり

コスト最適化

  • 不要なコストを削減できる可能性がある
  • 通関の遅延や誤った申告による追加費用のリスクも軽減できる

スピーディーな通関処理

  • AEO認定を受けた通関業者を利用することで、簡易な通関手続きが可能となり、輸出のリードタイムを短縮できる
  • 特に賞味期限の短い食品の輸出において重要なメリット

グローバルネットワークの活用

  • 輸出先国での通関手続きもスムーズになる
  • ドアツードアの一貫したサービスが可能

最新情報へのアクセス

  • 最新の貿易規制や手続きの変更に関する情報を持っている
  • 輸出企業は、常に最新の要件に適合した輸出ができる

トラブル対応のサポート

  • 通関手続き中に問題が発生した場合、迅速に対応し、解決策を提案
  • 輸出企業は不測の事態にも適切に対処できる

通関業者を利用する最大のメリットは、その専門性です。通関業者は常に最新の輸出規制や法令に精通しており、これらの知識を活用して、クライアントの輸出手続きを円滑に進めることができます。

特に食品輸出の場合、各国の厳格な衛生基準や検疫規則に対応する必要があり、通関業者の専門知識は非常に価値があります。

また、自社で通関手続きを行う場合と比較して、通関業者は専門的なソフトウェアやシステムを活用し、書類作成や申告手続きを迅速かつ正確に行うことができます。これにより、輸出プロセス全体の所要時間が大幅に短縮され、ビジネスの効率性が向上するでしょう。

そして、通関業者との効果的な協力関係を構築するためには、以下のようなアプローチが有効です。

  •  明確なコミュニケーション
  • 信頼関係の構築
  • フィードバックの提供
  • 継続的な学習

適切な通関業者を選択し、効果的な協力関係を構築することで、グローバル市場での競争力を高めることができます。通関業者の活用は、食品輸出ビジネスの成功に不可欠な要素と言えるでしょう。

輸出入通関における注意点とトラブル防止策

食品の輸出入通関には複雑な手続きと厳格な規制が伴うため、様々なトラブルが発生する可能性があります。これらのトラブルを未然に防ぎ、スムーズな通関を実現するためには、よくある注意点とトラブル防止策を押さえておくことが重要です。

これから紹介する注意点とトラブル防止策を適切に実施することで、食品の輸出入通関におけるリスクを大幅に軽減し、スムーズな国際取引を実現することができるでしょう。

ただし、完全にトラブルを排除することは難しいため、問題が発生した際の迅速な対応体制も整えておくことが重要です。

それではまず、通関トラブルと対処法について解説します。


- よくある通関トラブルとその対処法

最も頻繁に発生するトラブルとして、書類の不備や記載ミスが挙げられます。特に、HSコード(関税分類番号)の誤りは深刻な問題につながる可能性があります。このようなケースでは、速やかに通関業者に連絡し、修正した書類を提出することが重要です。場合によっては、申告の撤回や再申告が必要になることもあるでしょう。

次に、食品特有のトラブルとして、衛生証明書や検疫証明書の不備があります。輸出先国の要求する基準を満たしていない場合、貨物が差し止められる可能性も考えられます。このような事態を避けるためには、事前に輸出先国の規制を十分に調査し、必要な証明書を適切に準備することが不可欠です。

また、近年増加しているのが、食品表示に関するトラブルです。アレルギー表示や原産地表示の誤りは、輸出先国での通関を困難にする可能性があります。このようなケースでは、現地の規制に合わせて表示を修正し、再申告を行う必要があるでしょう。

さらに、食品の保存状態や品質に関するトラブルも発生することがあります。特に生鮮食品や冷凍食品の場合、輸送中の温度管理が不適切だったために通関で問題が生じることがあります。このような場合、状況に応じて貨物の検査や再梱包が必要になる可能性があります。

トラブル発生時の対応として最も重要なのは、迅速な情報共有と適切なコミュニケーションです。通関業者や輸出先の取引先、そして必要に応じて現地の規制当局とも連携を取り、問題の解決に向けて協力することが求められます。

また、近年のトレンドとして、デジタル化に伴う新たなリスクも注目されています。例えば、電子申告システムの不具合や、サイバーセキュリティの問題が通関トラブルの原因となることがあります。これらのリスクに対しては、システムの定期的なアップデートやセキュリティ対策の強化が重要です。


- 法令遵守と適切な申告の重要性

食品輸出は国際的な取引であり、日本の法律だけでなく、輸出先国の法律や国際条約にも従う必要があります。例えば、食品衛生法、植物防疫法、関税法などの遵守が求められます。これらの法令を遵守することで、安全で信頼できる食品を輸出し、日本の食品産業全体の評価を高めることにつながります。

また、法令遵守は企業のリスク管理の観点からも重要です。適切な法令遵守体制を整えることで、予期せぬ問題や遅延を回避し、スムーズな輸出プロセスを維持できます。さらに、AEO(認定事業者)制度のような優遇措置を受けられる可能性も高まり、ビジネス上の競争優位性を獲得できます。

一方、不適切な申告がもたらすリスクや罰則は深刻です。虚偽申告や誤った情報提供は、罰金や輸出許可の取り消し、さらには刑事罰の対象となる可能性があります。また、企業の信用失墜や取引先との関係悪化など、長期的な影響も無視できません。

特に注意が必要なことに、関税評価と原産地規則が挙げられます。関税評価では、輸出品の価格を正確に申告することが求められます。意図的な過少申告は脱税行為とみなされ、厳しい処罰の対象となります。原産地規則については、特恵関税の適用や原産地表示の正確性が問われます。

これらの申告に誤りがあると、追徴課税や罰則の対象となるだけでなく、輸出先国での通関拒否や製品回収などの事態を招く可能性があります。

食品の輸出入には最新情報と法令の把握が必須

食品の輸出入は、国際貿易の中でも特に複雑な分野の一つです。その理由は、食品が人々の健康に直接影響を与える可能性があるため、厳格な規制と管理が必要とされるからです。このため、食品輸出に携わる事業者は、常に最新の情報と法令を把握し、細やかな対応を行うことが求められます。

まず、食品輸出の許可や申請手続きは非常に煩雑です。例えば、植物性食品の場合、植物検疫証明書が必要となることがあります。また、畜産物や水産物では、衛生証明書の添付が求められる傾向にあります。

さらに重要なのは、食品輸出に関する法令や規制が頻繁に変更されるという点です。

例えば、放射能による輸出規制は、多くの国で撤廃されましたが、中国では水産物の輸出が急遽全面停止になるなど、予期せぬ変更が起こることがあります。このような変化に迅速に対応するためには、常に最新の情報を入手し、自社の輸出戦略を柔軟に調整する必要があります。

食品輸出に関する法令や規制の変更に対応するためには、社内体制の整備も重要です。

専門知識を持つ担当者の育成や、定期的な社内研修の実施、さらには通関業者や法律専門家との連携強化など、組織全体で最新情報を共有し、迅速に対応できる体制を構築することが求められるでしょう。

【記事監修者】

瀧井 朝永

食品管理者/飲食店オーナー。
鰻屋で調理経験を積み、その後割烹料理屋での経験を経て、パブやレストラン、ダイニングバーなど複数の飲食店を経営。現在は、東京・日暮里で「くいもの居酒屋Foods bar」を営む。

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