福島の卸売業者が世界へ ~展示会で輸出拡大を実現~

販売チャネルを広げ、輸出を拡大させるための秘訣や継続して出展するメリットについて、2017年から「“日本の食品”輸出EXPO」(以下「食品輸出EXPO」)に参加する渋谷レックス株式会社の代表取締役社長 渋谷 裕司さんに、営業担当 光永 恵(主催者)がお話を伺いました。

 

 

・価格競争と市場縮小をきっかけに輸出を開始

−■光永:御社の事業内容を教えてください。

−■渋谷社長(以下 渋谷):1951年に創業し、福島県を中心に菓子や食品の卸売りや小売、商品開発などを行なっています。海外には主として自社企画のベビー用食品を輸出しています。

 

−■光永:海外輸出を始めたきっかけを教えてください。

−■渋谷:地方の菓子卸売業全体が、価格競争と小売市場の縮小に直面したことがきっかけです。販売チャネルの新規開拓に危機意識を持っており、海外に目を向けました。

 

−■光永:いつから海外輸出を始められたのでしょうか。

−■渋谷:2014年からです。中国の展示会に出展し、ベビー用の商品展開を考えていた現地企業とパートナーシップを組んで輸出を始めました。子ども向けの商品が好まれていましたね。

 

−■光永:当時の輸出の売上はどの程度だったのでしょうか。

−■渋谷:おおよそ5千万円でした。その後、香港、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、カンボジアと輸出地域や取引先を増やし、現在では約3億円まで成長しています。

 

 

・「“日本の食品”輸出EXPO」が海外取引先との継続的な接点に

−■光永:食品輸出EXPOに出展したきっかけについてお聞かせください。

−■渋谷:既に輸出を始めていたのですが、当時は日本の食品の輸出を専門とする展示会がありませんでした。そんな中、日本貿易機構(JETRO)とRX Japan共催の展示会が開催されることを聞き、弊社は初回開催の2017年から現在まで毎年出展しています。海外の取引先のお客さまには、「毎回出展しているので、今回も是非お越しください」と都度お伝えしています。

 

−■光永:「食品輸出EXPO」が海外のお客さまとの接点になっているのでしょうか。

−■渋谷:そうですね。取引先のお客さまと対面でコミュニケーションする貴重な機会になっています。海外のお客さまから、現地の情報や商品の貴重なフィードバックをいただける機会としても活用しています。

 

−■光永:海外のお取引先の数は増えたのでしょうか。

−■渋谷:はい、輸出を開始した当初は1社でしたが、今では約20社になりました。最初は取引がなかったものの、毎回「食品輸出EXPO」でお会いしているうちに取引が始まり、取引額が増えていったお客様もいます。今では毎月、継続的に必ず発注してくださっています。

 

 

・マッチングシステムが有効な商談機会に

−■光永:継続的に出展される背景についてお聞かせください。

−■渋谷:輸出が拡大した点が一番大きいですね。取引先が拡がり、売上向上の機会が得られたので継続しています。そもそも、国内では海外バイヤーとの人脈形成の機会は少ないです。日本の食品に興味を持たれて来日される、目的が明確なバイヤーとの接点は貴重です。そうした機会をサポートしていただけるマッチングシステムもありがたいですね。

 

−■光永:出展社と来場者をマッチングするRX Japan独自のシステムのことですね。

−■渋谷:そうです。ブースにふらりと立ち寄られたお客さまと、そのまま商談するのは意外とハードルが高いのです。どうしても、名刺交換して10分程度立ち話をして「後日連絡します」といったケースが多くなってしまう。マッチングシステムであれば、事前にお互いのスケジュールを調整でき、商談を前提にお会いできます。

商談をしっかりできることがマッチングシステムのメリットだと思います。

−■光永:日本は展示会=PRの意識が強いのですが、海外では展示会=商談・仕入れの場なので、海外バイヤーは意識が高いですね。私たちもそういう商談展を目指しています。

 

 

・渡航規制緩和に備え、万全の態勢で出展へ

−■光永:継続して出展する中で何か課題はありましたか。

−■渋谷:2019年だったと思います。ブースに来場されるお客さまが多くて、対応できる要員が少なかった。来場者の需要を読みきれていませんでした。通訳も必要な場面もあり、リソース不足がありました。接客面で、機会損失感がありましたね。

 

−■光永:2023年はコロナ禍の渡航規制も解除され、来場者が増えそうです。

−■渋谷:6月開催に出展を予定していますが、万全を尽くしていきたいと思っています。

 

−■光永:最後に、今後の展望についてお聞かせください。

−■渋谷:弊社が先行者としてはじめた、中国向けのベビー用商品の輸出は、競合が増えてきています。これからは自分たちだけが提供できるビジネスモデルを作っていきたいですね。

弊社には、流通の力で食文化を育てたいといった経営理念があります。現地のお客さまの声やご要望、需要をお聞きし、海外にない商品を流通させることによって、現地の食文化が育つ。そうした役割を果たしていきたいと思っています。

今後は、アジアだけでなく、米国にも目を向けていきたいですね。「食品輸出EXPO」は国内に居ながらにして、海外のバイヤーとダイレクトにつながれる機会です。これからも継続して出展して事業拡大に繋げていきたいです。

<お話を伺った方>
渋谷レックス株式会社 代表取締役社長 渋谷裕司 さん

<公式HP>
http://www.shibuyarex.com/

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